銭川夫婦の絆 ”愛の伝説”
今年、八幡平国立公園は制定60周年を迎えます。
十和田湖は80周年、十和田八幡平地域の自然が長く守られ愛されてきたことに感謝です。
式典や記念誌の発行など記念行事の準備も進んでいます。
国立公園制定にあたり大変尽力された地域の方々がいらっしゃいました。
制定までの歴史も今度是非紹介したいと思っていますが
今回は銭川温泉の名前の由来になっっている伝説を紹介したいと思います。
よく、銭川は地名ですか?
銭が湧いたのですか?
温泉地の名前が銭川温泉なのですか(銭川温泉は一つなのですか?)などとご質問をいただきます。
その時にご紹介しているのがこちらの伝説です。
こちらは約20年前まで使っていた銭川温泉のパンフレット。
現在は無くなってしまいましたが、以前は中庭に間欠泉があり、蕗や野菜を茹でに足を運ぶ方もおりました。
また平成9年のお風呂改装前は男湯が大きく、女湯が小さな作りでありました。
何十年前に来て泳いだ記憶があるという人も時々いらっしゃいます(^^)
ホームページでも要約した伝説を掲載していますが、
こちらがパンフレット掲載の伝説全文です。
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昔みちのくの山里「長牛」という所に、うら若い夫婦の者が住んでいました。
或る年の夏の頃ふとしたことが原因で妻の方が病気になってしましました。
夫は大変心配して何とかして治してやりたいものと考えかねて風の便りに聞いていた山奥の出湯に湯治に連れて行きました。
いつとはなく病を養って
湯治の朝夕を送っているうちにその年も暮れて
お正月も山の温泉でひっそりと静かに迎え、
やがて
小正月になってからひとまづ下山してみようということになりましたが
妻の病は意外に重く、加えて折から外は丈余の深雪で道も定かでなく
已むなく夫は妻を残し早々に又山に迎えに来ることを固く約して下山しました。
一人しょんぼり山の出湯に残された病妻は
丁度その夜三五の月皎々と静かに更ける山々に輝いて
ひとしお独り居の寂しさが感じられ
月が差し込む湯槽に浸りながら思わず深い溜息を漏らし今日深雪を踏みこえて下山して行った夫を想い偲んでおりました。
ふと気がつくと直ぐ湯槽のそばに物凄い顔をした大きな山男が立っていたのです。
驚いて見上げるとその山男は「お前はどうしてこんな淋しい山奥の温泉にたった一人来ているのか」と尋ねました。
女はぶるぶる震えながら怖る怖る不治の病を養って湯治に来ているが夫は今朝下山したことなど今までの事ども語りました。
すると山男は「それはそれは気の毒だ可愛そうに・・・私が治してあげよう」と女の背中を撫でさすってやると忽ちその手には一と掴み許りの髪の毛のような毛がつかみとられていました。
するとアーラ不思議や忽ち嘘のようにすっかり病気が治ってしまいました。
女はあまりの不思議さ有り難さに驚いていると山男は間もなくそのまま黙って帰って行くのです。じーっとその後姿を見詰めていると月夜の樹の間に煙の如くスーッと消えて見えなくなってしまいました。女はハッと我に返っってさても不思議なことよ。
今あの山男の手でつかみ取られた毛が前の川に流れて行ったことが何かこの川に関係があることだと気がつき、そうだ!!この川の瀬が熱して湯となりあの重い病が毛となって流れて行って治ったことを悟りました。
ああこれは有難いことだなんとかしてこのことに感謝の心を表したいと思いこの川にちなんだ湯の名を「瀬煮川の湯」(後に今の銭川の湯)と名付け、
迎えに来てくれると下山した夫をいつまでも待ち侘びながら長くこの地に住んで生涯を送ったということであります。
又女は常日頃から眼を患っておりましたが、毎日この湯で眼を洗っているうちにすっかり良くなってしましました。
そこで裏手に一字を建て「薬師神社」を祀り一本の杉の木をその傍に植えました。
今に残る薬師神社と大杉はそれであると伝えられております。
(S39.12.10金次郎 口伝)
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口伝えの伝説なため、矛盾点もありますし、夫は早々に里に下り、妻は生涯をここで過ごしたことになっているため”愛の伝説”と言われているのは少し疑問がありますが、銭川温泉にはこんな由来がありました。
伝説に出てくる長牛(なこうし)地区は実際に鹿角市八幡平地域にある集落です。
薬師神社は平成23年に現在の建物正面の場所に移築しましたが、
それまでは夫婦杉の下に祀られておりました。
こちらは昨年春の様子。大きな杉はいつも銭川温泉を見守ってくれています。
また、こちらはパンフレットと一緒に保管していた1973年版、43年前の八幡平の観光案内図です。よく見るとイラストが可愛らしく、シンプルで分かりやすい地図になっています。
まだ高速道路が開通していない時の地図です(^^)
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今日は気温も高く、風が強く雨も降ってきました。
雪解けが進んでいます。
八幡平アスピーテラインの開通は4月15日。
前日には、開通前の道路を歩くこんなイベントが行われます。
貴重な機会ですので是非!